更新日:2026年8月16日
STP分析とは、市場を分割し(Segmentation)、狙う層を決め(Targeting)、その層の中での立ち位置を定める(Positioning)という3段階で戦略を組み立てるフレームワークです。
フィリップ・コトラーが体系化したもので、「誰に、どう認識されたいか」を決めるために使います。商品開発や広告の前に置く工程です。
この3つは順番に依存します。分割を間違えるとターゲットも間違い、ターゲットが曖昧だとポジショニングが決まりません。
3ステップの役割
| 段階 | 決めること | 出力 |
|---|---|---|
| Segmentation(分割) | 市場をどう切るか | ◯◯軸で分けた3〜6のグループ |
| Targeting(選択) | どのグループを狙うか | 狙う1〜2セグメントと、狙わない理由 |
| Positioning(位置づけ) | その中でどう見られたいか | 一文の位置づけと、根拠 |
「狙わないセグメントを決める」ことがSTPの本質です。全員に売ろうとすると、どのセグメントにも刺さらない訴求になります。
① セグメンテーション:BtoBの分割軸
BtoCの分割軸(年齢・性別・居住地)はBtoBでは使えません。BtoBでは次の軸を組み合わせます。
| 軸 | 使いどころ | |
|---|---|---|
| 企業規模 | 従業員数、売上高 | 決裁プロセスと予算が変わる |
| 業種 | 製造、IT、人材、建設など | 課題と用語が変わる |
| 地域 | 全国、首都圏、特定県 | 訪問可否、商習慣 |
| 体制 | 専任がいる/兼任 | 使いこなせる機能の範囲が変わる |
| 成熟度 | 未着手/一部導入済/乗り換え検討 | 必要な説明の深さが変わる |
| 購買動機 | コスト削減/売上拡大/人手不足 | 訴求すべき価値が変わる |
軸は2つまでに絞ってください。3軸以上で切るとセグメントが細かくなりすぎ、それぞれの規模が小さくなって施策が組めません。
分割が有効かを確認する4条件
| 条件 | 確認すること | 満たさないと |
|---|---|---|
| 測定できる | その層の企業数が数えられるか | 規模が見積もれない |
| 到達できる | 広告やリストでその層に届くか | 施策が打てない |
| 十分な規模がある | 事業として成り立つ数か | 売上が積み上がらない |
| 反応が異なる | 他の層と違う反応をするか | 分ける意味がない |
4つ目が最も見落とされます。分けても同じ訴求で同じように反応するなら、その軸は無意味です。
② ターゲティング:狙う層を選ぶ
| 評価項目 | 見るもの | 点の付け方 |
|---|---|---|
| 市場規模 | 対象企業数 × 単価 | 大きいほど高い |
| 成長性 | その層が増えているか | 増加傾向なら高い |
| 競合の強さ | 既に強い会社がいるか | 少ないほど高い |
| 自社との相性 | 既存顧客に多いか、実績があるか | あるほど高い |
| 到達しやすさ | リスト・広告・紹介で届くか | 届きやすいほど高い |
| 収益性 | 受注単価と継続率 | 高いほど高い |
各項目を5点で採点し、合計で比べます。ただし「自社との相性」が低い層は、他が高くても避けるのが安全です。実績のない層では商談で説明できません。
③ ポジショニング:一文で言えるか
ポジショニングは、狙った層の頭の中で自社をどこに置くかを決めることです。次の形で一文にします。
「◯◯(ターゲット)にとって、△△(競合カテゴリ)の中で、□□(独自の価値)である存在」
| 要素 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|
| ターゲット | 中小企業全般 | 専任マーケターがいない従業員50〜300名のBtoB企業 |
| カテゴリ | マーケティングツール | MAツール |
| 独自の価値 | 高機能で使いやすい | 設定不要で、導入初月から来訪企業が見える |
「使いやすい」「高機能」「サポートが手厚い」は全社が言っているため、位置づけになりません。競合が言えないことを書きます。
ポジショニングマップの作り方
2軸のマップで自社と競合を配置します。軸の選び方に条件があります。
- 顧客が実際に比較する基準を軸にする(作り手の都合ではない)
- 2軸は相関しないものを選ぶ(「価格」と「機能数」は相関するので不可)
- 自社が右上に来るように軸を選ばない(結論を先に置くと意味がない)
- 競合を3〜5社置き、空いている場所があるかを見る
| 軸の組み合わせ例 | 見えること |
|---|---|
| 機能の広さ × 導入の手軽さ | 広く重いか、狭く軽いか |
| 対象規模(中小⇔大企業) × 支援の厚さ | どの規模に、どこまで伴走するか |
| 汎用⇔業種特化 × 価格帯 | 特化型が空いていないか |
空白があっても、そこに需要があるとは限りません。誰も置いていない場所は、成り立たないから空いている場合があります。
まとめ
- STPは分割 → 選択 → 位置づけの順に進める
- BtoBの分割軸は規模・業種・体制・成熟度・購買動機。2軸まで
- 分割は「反応が異なるか」で有効性を確認する
- ターゲットは規模・成長性・競合・自社との相性で採点する
- ポジショニングは一文で言えるかが合格ライン
- マップの軸は、自社が有利になるように選ばない
よくある質問
セグメントはいくつに分けるのが適切ですか?
3〜6が目安です。2つでは分ける意味が薄く、7つ以上では各セグメントの規模が小さくなり、それぞれに施策を用意できなくなります。分割軸を2つまでに絞ると、自然にこの範囲に収まります。
ターゲットを絞ると売上が減りませんか?
短期的には接触できる母数が減りますが、訴求が具体的になるため反応率が上がります。BtoBでは特に、「中小企業の皆様へ」より「従業員50〜300名の製造業で、営業が5名以下の企業へ」のほうが刺さります。絞ったターゲット以外に売ってはいけない、という意味ではありません。
ポジショニングは変えてもよいですか?
変えられますが、頻繁に変えると認識が定着しません。市場環境が変わったとき、競合が同じ位置に来たとき、狙う層を変えたときが見直しの契機です。年に1回程度、実際の受注顧客の傾向と照らして点検するのが現実的です。
STP分析はいつ行いますか?
3C分析やPEST分析で環境を把握した後、4P/4Cで具体的な施策を決める前です。順序としては「環境分析 → STP → 4P/4C → 実行」となります。既存事業でも、思うように受注が伸びないときはSTPまで戻って点検すると原因が見えることがあります。