更新日:2026年8月16日
SIPSとは、共感(Sympathize)、確認(Identify)、参加(Participate)、共有・拡散(Share & Spread)の4段階で消費者の行動を捉える、ソーシャルメディアを前提とした購買行動モデルです。
2011年に電通のソーシャルメディア関連チームが提唱しました。従来のモデルが「認知」から始まるのに対し、SIPSは「共感」から始まる点が特徴です。
また、購入で終わらず「共有・拡散」まで含めることで、顧客自身が次の顧客を連れてくる循環を扱います。
4段階の内容
| 段階 | 行動の例 | |
|---|---|---|
| Sympathize(共感) | 発信者や内容に共感する | 投稿を見て「分かる」と感じる、フォローする |
| Identify(確認) | 自分に合うか確かめる | 検索する、レビューを見る、知人に聞く |
| Participate(参加) | 関わる | いいね、コメント、イベント参加、購入 |
| Share & Spread(共有・拡散) | 広める | 投稿する、勧める、レビューを書く |
Participate(参加)に購入が含まれる点が独特です。購入は数ある関与の形の一つであり、ゴールではないと捉えます。
他のモデルとの違い
| モデル | 段階 | 前提 |
|---|---|---|
| AIDMA | 注意→興味→欲求→記憶→行動 | マスメディア。一方向の情報伝達 |
| AISAS | 注意→興味→検索→行動→共有 | 検索エンジンの普及 |
| SIPS | 共感→確認→参加→共有拡散 | ソーシャルメディア。人が情報源 |
| DECAX | 発見→関係→確認→行動→体験共有 | コンテンツマーケティング。顧客が見つける |
起点が「企業からの認知獲得」から「顧客側の発見・共感」へ移っているという流れで並んでいます。
① 共感を得るために
- 誰が言っているかを明確にする:法人名だけでなく、担当者の顔と言葉
- 売り込みを前に出さない:共感の段階では商品の話をしない
- 課題を具体的に描写する:「◯◯で困っていませんか」ではなく、実際の場面を書く
- 失敗も出す:うまくいった話だけでは共感されにくい
- 一貫した発信を続ける:単発では認識されない
② 確認の段階で用意するもの
| 顧客が確かめること | 用意するもの |
|---|---|
| 本当に効果があるのか | 導入事例、数値の実績 |
| 自分と同じ立場の人が使っているか | 業種別・規模別の事例 |
| 評判はどうか | レビュー、第三者の言及 |
| いくらかかるか | 価格帯の目安 |
| 失敗しないか | 無料期間、解約条件、サポート内容 |
確認は自社サイトの外で行われます。比較サイト、SNS、知人への相談で判断されるため、自社サイトだけを整えても不十分です。
③ 参加のハードルを段階的に下げる
| 関与の深さ | 行動 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 浅い | 記事を読む、投稿を見る | 無料の記事、投稿 |
| 資料をダウンロードする | 無料資料 | |
| ウェビナーに参加する | オンラインセミナー | |
| 無料で試す | トライアル、無料プラン | |
| 深い | 契約する | 有料プラン |
| 事例に協力する、勧める | 事例取材、紹介制度 |
段差が大きいと途中で止まります。「記事を読む」の次が「商談」では飛びすぎです。
④ 共有・拡散を生む
| きっかけ | 施策 |
|---|---|
| 成果が出た | 導入事例として一緒に発信する |
| 人に教えたくなる情報 | 調査データ、比較表、テンプレートの公開 |
| 関わった実感 | ユーザー会、機能要望の反映を伝える |
| 紹介の動機 | 紹介制度、紹介元へのインセンティブ |
BtoBでは個人のSNS拡散より、業界内の口コミと紹介のほうが影響が大きくなります。
BtoBでSIPSを使うときの解釈
| 段階 | BtoBでの読み替え |
|---|---|
| 共感 | 担当者個人が「うちの課題だ」と感じる |
| 確認 | 社内で説明できる材料を集める |
| 参加 | 資料請求、ウェビナー、トライアル、稟議 |
| 共有・拡散 | 社内での推薦、同業への紹介、事例協力 |
BtoBの「共有」は不特定多数への拡散ではなく、社内の意思決定者への伝達が中心です。担当者が社内で説明しやすい資料を渡せているかが要になります。
まとめ
- SIPSは共感 → 確認 → 参加 → 共有拡散の4段階
- 認知ではなく共感から始まる点が従来モデルとの違い
- 購入は「参加」の一形態であり、ゴールではないと捉える
- 確認は自社サイトの外で行われる
- 参加のハードルは段階的に下げる
- BtoBの共有は社内への伝達が中心。説明しやすい材料を渡す
よくある質問
SIPSとAISASはどう使い分けますか?
検索が起点になる商材ではAISAS、SNSや口コミが起点になる商材ではSIPSが実態に近くなります。BtoBの多くは検索起点のためAISASが当てはまりやすいですが、共有・拡散(紹介)の設計を考える場面ではSIPSの視点が役立ちます。
BtoBでもSIPSは使えますか?
使えます。ただし「共有・拡散」を不特定多数へのSNS拡散と読むと当てはまりません。社内の決裁者への伝達、同業他社への紹介と読み替えてください。担当者が社内で説明するための資料を整えることが、BtoBにおける拡散施策にあたります。
共感はどうすれば生まれますか?
商品の説明ではなく、顧客が置かれている状況の描写から始めてください。「営業リストを毎週手作業で作っている」「上司に効果を聞かれても答えられない」といった具体的な場面が書かれていると、当事者は自分のことだと認識します。抽象的な課題提起では共感されません。
購買行動モデルは実務でどう使いますか?
施策の抜けを見つけるチェックリストとして使うのが実用的です。各段階に対応する施策が用意されているかを確認し、空いている段階を埋めます。モデルどおりに顧客が動くわけではないため、行動を予測する道具としてではなく、点検の枠組みとして扱ってください。