更新日:2026年8月16日
解約率(チャーンレート)とは、一定期間内に契約を終了した顧客の割合のことです。
継続課金型の事業では、新規獲得と同じかそれ以上に事業成長を左右する指標です。
解約率が高いと、獲得しても顧客が抜け続けるため、売上が積み上がりません。穴の空いたバケツに水を注ぐ状態になります。
2種類の解約率
| 種類 | 計算 | 見えること |
|---|---|---|
| カスタマーチャーン(件数) | 期間内の解約社数 ÷ 期首の契約社数 | 何社抜けたか |
| レベニューチャーン(金額) | 期間内の減少額 ÷ 期首の月次売上 | いくら抜けたか |
| ネットレベニューチャーン | (減少額 − 増額分)÷ 期首の月次売上 | 増額を加味した実質 |
両方見てください。件数の解約率が低くても、大口顧客が抜けていれば金額の影響は大きくなります。逆も同様です。
計算例
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 期首の契約社数 | 200社 |
| 当月の解約社数 | 4社 |
| カスタマーチャーン(月次) | 2.0% |
| 期首の月次売上 | 1,000万円 |
| 解約による減少額 | 15万円 |
| 既存顧客の増額(アップセル) | 25万円 |
| レベニューチャーン(月次) | 1.5% |
| ネットレベニューチャーン | −1.0%(実質増加) |
ネットがマイナス(=実質増加)なら、新規獲得がゼロでも売上が伸びる状態です。NRR(売上維持率)が100%を超えている状態と同じ意味になります。
目安の考え方
| 対象 | 傾向 |
|---|---|
| 小規模企業向け | 解約率は高くなりやすい(体制変更・事業縮小の影響を受けやすい) |
| 中堅・大企業向け | 解約率は低くなりやすい(導入の意思決定が重く、簡単に止められない) |
| 年間契約 | 月次で見ると低く出るが、更新時期に集中する |
| 月額契約 | いつでも解約できるため分散する |
業界平均との比較はあまり意味がありません。顧客層と契約形態で大きく変わるため、自社の推移と、セグメント別の差を見てください。
解約の予兆
| 予兆 | 示していること | 検知の方法 |
|---|---|---|
| ログイン頻度の低下 | 使われなくなっている | 利用ログ |
| 主要機能が使われていない | 価値を実感していない | 機能別の利用状況 |
| 担当者の交代 | 関係が切れる | 問い合わせ元の変化 |
| 問い合わせの減少 | 関心の低下 | サポート履歴 |
| メールの開封率低下 | 関心の低下 | 配信結果 |
| サポートへの不満 | 課題が未解決 | 対応履歴 |
| 請求書の支払い遅延 | 社内での優先度低下 | 経理データ |
最も早く現れるのはログイン頻度の低下です。契約更新の相談が来た時点では、既に社内で結論が出ていることがほとんどです。
段階別の打ち手
| 段階 | 課題 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 導入直後(0〜1か月) | 設定が終わらない | 初期設定の代行、伴走 |
| 立ち上げ期(1〜3か月) | 使い方が分からない | 操作説明、テンプレート提供 |
| 定着期(3〜6か月) | 成果が見えない | 月次レポート、成果の可視化 |
| 安定期(6か月〜) | 使う人が固定化 | 他部署への展開支援 |
| 更新期 | 費用対効果を問われる | 導入前後の数値比較を提示 |
解約の多くは最初の3か月で決まります。ここで定着しなかった顧客は、その後も使われないまま更新時に切られます。
解約理由の分類
| 分類 | 理由の例 | 対処の可否 |
|---|---|---|
| 自社に原因あり | 使いこなせない、成果が出ない、サポート不足 | 対処できる |
| 期待とのずれ | できると思っていた機能がない | 受注時の説明を見直す |
| 担当者要因 | 推進者の異動・退職 | 複数人に広げておく |
| 顧客側の事情 | 事業縮小、予算削減、方針転換 | 対処が難しい |
| 競合への移行 | 他社のほうが合っていた | 差別化の見直し |
「期待とのずれ」は営業段階の問題です。受注のために期待値を上げすぎると、解約という形で後から返ってきます。
解約を減らすために測ること
- コホート別の継続率:契約月ごとに、何か月継続しているか
- セグメント別の解約率:規模別、業種別、流入経路別
- 解約までの平均期間:早期解約が多いか、長期後の解約が多いか
- 解約理由の分布:選択肢を決めて集計する
- 利用率:契約しているが使っていない顧客の割合
流入経路別の解約率は特に有用です。獲得単価が安い経路でも、解約率が高ければ実質的な費用は高くなります。
まとめ
- 解約率は件数(カスタマー)と金額(レベニュー)の両方を見る
- ネットレベニューチャーンがマイナスなら実質増加
- 業界平均との比較より自社の推移とセグメント別の差
- 最も早い予兆はログイン頻度の低下
- 解約の多くは最初の3か月で決まる
- 「期待とのずれ」は営業段階の問題
- 流入経路別の解約率を見ると獲得施策の評価が変わる
よくある質問
解約率はどのくらいが適正ですか?
顧客層と契約形態によって大きく変わるため、一律の目安を当てはめる意味は薄いです。小規模企業向けのサービスは構造的に高くなりやすく、大企業向けは低くなりやすい傾向があります。業界平均を探すより、自社の月次推移と、セグメント別(規模・業種・流入経路)の差を見てください。
解約の予兆はどう捉えますか?
ログイン頻度の低下が最も早く現れます。契約更新の相談が来た時点では、社内で既に結論が出ていることがほとんどです。「直近30日のログインが前月比で半減した顧客」を自動で抽出できる状態にしておき、その時点でサポートから連絡する運用が有効です。
解約率を下げるには何から着手すべきですか?
導入直後から3か月間の立ち上げ支援です。解約の多くはこの期間に定着しなかったことに起因します。初期設定の代行、操作説明、テンプレートの提供によって「使える状態」まで持っていくことが、その後の継続率を大きく左右します。
解約理由はどう集めればよいですか?
選択肢を事前にMECEに設計して、解約時に必ず記録してください。自由記述だけだと後から集計できません。分類は「使いこなせない/成果が出ない/機能不足/価格/担当者の交代/事業側の事情/他社へ移行」といった形です。加えて、可能であれば解約後に短いヒアリングを行うと、選択肢では拾えない実態が分かります。