
「MAツールを入れたい」と考えて見積もりを取ると、月額10万円、年間で100万円を超える金額が並ぶ ── BtoB のマーケティングツールでは珍しい話ではありません。
ソフトウェアは一度作れば何社に使ってもらっても原価がほとんど増えないはずなのに、なぜこの水準になるのか。その内訳の多くを占めているのは、開発費ではなく集客の費用ではないかというのが、私たちが自社の価格を決めるときに行き着いた考えです。
この記事では、その構造を順を追って説明します。一部は公開情報から逆算した推測を含みますので、そこは明記しながら進めます。
そもそも、BtoBツールは価格が分からない
価格の話をする前に、前提として押さえておきたいことがあります。BtoB のツールは、そもそも金額が公開されていません。
当社が運営するマーケティングツール比較データベースでは、各製品の公式サイトを1つずつ確認して料金の表示方法を記録しています。掲載している397製品を数えた結果がこちらです。
| 料金の表示 | 製品数 | 割合 |
|---|---|---|
| 公式サイトに金額の記載がある | 18 | 4.5% |
| 無料で使える | 1 | 0.3% |
| 要問い合わせ(金額の記載なし) | 378 | 95.2% |
20製品に1製品しか、価格を見て検討を始められません。カテゴリ別に見るとさらに極端で、SFA 78製品と CRM 63製品は、141製品すべてが金額を公開していませんでした。
比較サイトで「相場は月額◯万円」と書かれているのを見かけますが、その根拠になる一次情報は実際にはこれだけしかありません。価格が見えないまま、問い合わせて初めて金額を知るというのが、この分野の実情です。
見積もりに何が乗っているのか
では、出てきた見積もりの中身は何でしょうか。サーバー代、開発人件費、サポート人件費 ── どれも必要な費用です。ただ、それだけで月額10万円になるかというと、少し説明が足りない気がしていました。
調べていて行き当たったのが、この分野の広告費の高さです。
「MAツール」で広告を出すといくらかかるか
「MAツール」「SFA」「CRM」といったキーワードは、リスティング広告の激戦区です。検討している企業が明確で、契約すれば年単位の売上になる。だから各社が入札を競り上げます。
実際に出稿を検討して調べたところ、クリック単価が3,000円を超えることも珍しくありませんでした。1回クリックされるだけで3,000円です。
| 段階 | 想定 | 単価 |
|---|---|---|
| クリック | 広告が押される | 3,000円 |
| コンバージョン(資料請求・問い合わせ) | クリックの数%が申し込む | 数万円 |
| 受注 | 問い合わせの一部が契約に至る | 数十万円 |
※ クリック単価は実際に確認した水準ですが、そこから先のコンバージョン単価・獲得単価は当社の推測です。各社の実際の数字ではありません。BtoB のフォーム申し込みのコンバージョン率と、そこからの受注率に一般的な水準を当てはめて逆算したものとしてお読みください。
獲得単価から逆算すると、価格が決まってしまう
仮に1社を獲得するのに数十万円かかるとします。すると、事業として成立させるために必要な条件が自動的に決まります。
- 獲得単価が数十万円なら、1社あたりの生涯売上(LTV)は最低でもその数倍必要になる
- 平均の契約期間を2〜3年と見るなら、年間で100万円以上の売上設計にしないと利益が残らない
- 年間100万円を12で割ると、月額8〜10万円という水準になる
つまり、月額10万円という価格は「その機能の価値」だけで決まっているのではなく、「その顧客を獲得するのにかかった費用」から逆算されている可能性があります。機能を減らしても、集客の構造が同じである限り価格は下がりません。
そして解約されると獲得費用を回収できないため、年間契約や最低契約期間が設定されることになります。価格が公開されない理由の一つも、ここにあるのかもしれません。導入企業の規模によって支払える上限が違うため、一律の金額を出しにくいのです。
grip space が広告を使わない理由
私たちは、この構造に乗らないことを選びました。リスティング広告に出稿していません。
代わりに、集客は次の2つで行っています。
1. 自社のフォーム営業ツールで、自分たちが営業する
grip space にはフォーム営業の機能があります。この機能を、私たち自身が自社の新規開拓に使っています。
広告のように「探しに来た人を待つ」のではなく、こちらから条件に合う企業へアプローチします。1件あたりにかかるのは送信の実費程度で、クリック単価3,000円のような費用は発生しません。
さらに、送信後に相手がサイトへ来たかどうかをアクセス解析で検知できるため、反応があった企業だけを追えます。獲得単価を押し上げる「反応の見えない相手を追いかける工数」を減らせます。
2. 検索から見つけてもらう
もう一つが、このコラムのようなコンテンツと、ツール比較データベースです。300本を超える記事を書き、検索から来ていただく流入を積み上げています。
記事を書く工数はかかりますが、広告と違って止めた瞬間にゼロにはなりません。書いた記事は資産として残り続けます。その結果、集客にかかる費用を広告より大幅に抑えられています。
ちなみに、その検索順位や流入キーワードの管理もgrip space の SEO 管理機能で行っています。自社で使って必要だと分かった機能を、そのまま製品にしています。
その差が、そのまま価格に出ています
獲得単価が下がれば、回収しなければならない金額も下がります。だから grip space は金額を公開できますし、月額を低く設定できます。
| 広告中心の集客 | grip space | |
|---|---|---|
| 主な集客手段 | リスティング広告 | フォーム営業・SEO |
| 1社あたりの獲得費用 | 数十万円(推測) | 大幅に低い |
| 必要な LTV | 年100万円以上の設計 | 低く抑えられる |
| 価格の公開 | 要問い合わせが大半 | 公開しています |
| 契約期間の縛り | 年間契約が多い | 月単位で解約可能 |
安いのは、機能を削っているからでも、品質を落としているからでもありません。集客の方法が違うからです。
ツールを選ぶときに見ておきたいこと
この話は、grip space を選んでいただくためだけのものではありません。ツールを比較する立場からも、いくつか使える視点があります。
- 金額を公開している製品かどうかを見る。公開できている製品には、公開できる事情があります。397製品中18製品しかないので、それだけで候補が絞れます。
- 最低契約期間を確認する。年間契約が必須なら、その製品は獲得費用の回収に時間を必要としている可能性があります。
- 「使われなかったときの損失」で考える。安いプランを契約して使われずに解約するのが、いちばん高くつきます。月単位で解約できるか、無料で試せるかは重要な条件です。
- 機能の必要性を先に絞る。価格から入ると95%が要問い合わせなので進みません。必要な機能で3社程度まで絞り、同じ条件でまとめて見積もりを取るのが早道です。
まとめ
- BtoB ツールは397製品中378製品が要問い合わせで、価格が見えない
- 「MAツール」「SFA」などのキーワードはクリック単価が3,000円を超える激戦区
- そこから逆算すると獲得単価は数十万円規模になり、年間100万円以上の LTV 設計が必要になる(この逆算部分は当社の推測です)
- 月額10万円という水準は、機能の価値というより集客構造から決まっている可能性がある
- grip space は広告を使わず、自社のフォーム営業と SEO で集客しているため、その分を価格に反映できる
料金プランはこちらで公開しています。フリープランからお試しいただけますので、まず触ってご判断ください。
