更新日:2026年8月16日
バリューチェーン分析とは、事業活動を「主活動」と「支援活動」に分解し、どの工程で価値が生まれ、どこにコストがかかっているかを可視化する手法です。
マイケル・ポーターが提唱したもので、自社の強みが具体的にどの工程にあるのかを特定するために使います。
「うちの強みは提案力です」といった曖昧な認識を、工程単位まで分解して確かめる作業だと考えてください。
主活動と支援活動
| 区分 | 活動 | 内容 |
|---|---|---|
| 主活動 | 購買物流 | 原材料・仕入れの調達と受け入れ |
| 主活動 | 製造・オペレーション | 製品の生産、サービスの提供 |
| 主活動 | 出荷物流 | 納品、配送、提供の実施 |
| 主活動 | 販売・マーケティング | 集客、商談、受注 |
| 主活動 | サービス | 導入支援、保守、サポート |
| 支援活動 | 全般管理 | 経営企画、経理、法務 |
| 支援活動 | 人事・労務 | 採用、育成、評価 |
| 支援活動 | 技術開発 | 製品開発、業務システム |
| 支援活動 | 調達 | 設備・サービスの購買 |
製造業を前提にした分類のため、自社の業態に合わせて工程名を書き換えて構いません。SaaSなら「開発 → 集客 → 商談 → オンボーディング → カスタマーサクセス」のように並べます。
進め方4ステップ
| 手順 | やること | 出力 |
|---|---|---|
| ① 工程を洗い出す | 自社の活動を5〜8工程に分解する | 工程の一覧 |
| ② コストを配分する | 人件費・外注費・システム費を工程ごとに割り振る | 工程別のコスト |
| ③ 価値を評価する | 各工程が顧客価値にどう寄与するかを評価 | 強み/並/弱みの3段階 |
| ④ 打ち手を決める | 強みは伸ばし、弱みは改善か外注 | 工程ごとの方針 |
②のコスト配分は概算で構いません。1円単位の正確さより、どの工程が重いかが分かることが目的です。
工程別にコストと価値を並べる
| 工程 | 年間コスト(例) | 顧客価値への寄与 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 商品開発 | 3,000万円 | 高(差別化の源泉) | 強み |
| 集客(Web・広告) | 1,200万円 | 中(届かないと始まらない) | 弱み |
| 商談・受注 | 2,400万円 | 高(提案の質が決め手) | 強み |
| 導入支援 | 900万円 | 高(初期の離脱を防ぐ) | 並 |
| 保守・サポート | 1,500万円 | 中(不満の抑制) | 並 |
| 請求・事務 | 600万円 | 低 | 並 |
「コストが高く、価値も高い」工程が自社の核です。ここは削ってはいけません。逆に「コストが高いのに価値が低い」工程が改善の候補になります。
強み・弱みの判定基準
| 問い | 強みと言える条件 |
|---|---|
| 競合より優れているか | 同業と比べて明確に差がある |
| 顧客が認識しているか | 受注理由として顧客の口から出る |
| 真似されにくいか | 蓄積・体制・関係性に依存している |
| 他の工程にも効くか | その工程の強さが他工程を助けている |
4つすべてを満たす工程はまれです。「顧客が認識しているか」を満たさない強みは、まだ強みではありません。伝えるところから始めます。
工程ごとの打ち手
| 状態 | 打ち手 |
|---|---|
| 価値が高く、競合より強い | 投資を増やす。訴求の中心に据える |
| 価値が高いが、競合より弱い | 最優先で改善する。人材・システムを入れる |
| 価値が低く、コストが高い | 標準化・自動化・外注を検討する |
| 価値が低く、コストも低い | 現状維持でよい |
「価値が高いのに弱い工程」が最も損失を生みます。優れた商品を作っていても集客が弱ければ、届かないまま終わります。
BtoBでよく見つかる弱点
- 集客工程の外注依存:広告代理店任せで、何が効いているか社内に分からない
- 商談から受注までの属人化:受注できる担当とできない担当の差が大きい
- 導入支援の不足:受注後の立ち上げが遅く、初年度で解約される
- 失注後の放置:一度断られた見込み客への再接触が仕組み化されていない
- 顧客情報の分断:マーケ・営業・サポートが別々に情報を持ち、引き継がれない
いずれも「工程そのものが無い」のではなく、工程間のつなぎ目が抜けているケースです。分析の際は工程だけでなく、工程と工程の受け渡しも見てください。
まとめ
- バリューチェーン分析は事業を工程に分解して強みを特定する手法
- 主活動と支援活動に分けるが、自社の業態に合わせて書き換えてよい
- 工程ごとにコストと顧客価値への寄与を並べる
- 強みの条件は「競合より優れ、顧客が認識し、真似されにくい」
- 価値が高いのに弱い工程を最優先で改善する
- 工程だけでなく、工程間のつなぎ目も点検する
よくある質問
バリューチェーン分析とサプライチェーンの違いは何ですか?
サプライチェーンは原材料から顧客までのモノの流れを、企業をまたいで見るものです。バリューチェーンは自社内の活動が価値をどう生んでいるかを見ます。前者は物流と在庫の最適化、後者は競争優位の特定が目的です。
サービス業や無形商材でも使えますか?
使えます。主活動の名称を自社の工程に置き換えてください。SaaSであれば「開発 → 集客 → 商談 → 導入支援 → 継続支援」、コンサルティングであれば「案件開拓 → 提案 → 実行支援 → 成果報告」といった形です。分類そのものより、工程に分けて評価する行為に意味があります。
コストの配分はどこまで正確にすべきですか?
概算で十分です。人件費は各工程に関わる人数と時間の割合で按分し、システム費は用途で振り分ける程度で構いません。目的は工程間の相対的な重さを知ることで、会計上の正確な原価計算ではありません。細かくしすぎると分析自体が終わりません。
分析した結果、強みが見つからない場合はどうしますか?
その場合、現時点で明確な優位がないという結果自体が重要な情報です。次に取る手は2つで、①価値が高い工程のどれかに集中投資して強みを作るか、②STP分析でターゲットを絞り、その層に対してだけ強い状態を作るかです。全工程を平均的に改善しても差はつきません。