更新日:2026年8月16日
相見積もりとは、発注側が複数の会社から見積を取り、内容と金額を比較して発注先を決めることです。
価格だけを比べるためのものではありません。発注側は、社内で「なぜこの会社にしたか」を説明する材料としても使います。
受ける側にとっては、最安値でなくても選ばれる余地があるということです。
発注側が相見積もりを取る理由
| 理由 | 示していること |
|---|---|
| 価格の妥当性を確認したい | 相場が分からない |
| 社内説明の材料が必要 | 稟議で比較を求められる |
| 社内規程で決まっている | 一定額以上は複数社必須 |
| 提案内容を比べたい | 手段が固まっていない |
| 既存業者の価格を検証したい | 本命は決まっている可能性 |
最後の場合は「当て馬」です。ヒアリングが浅い、要件が既に固まりすぎている、といった兆候があれば、工数のかけ方を調整してください。
比較される項目
| 項目 | 重み | 備考 |
|---|---|---|
| 金額 | 大 | ただし最安が選ばれるとは限らない |
| 見積の範囲 | 大 | どこまで含むかが不明確だと比較できない |
| 納期・スケジュール | 大 | — |
| 実績 | 中 | 同業・同規模 |
| 体制 | 中 | 誰が担当するか |
| 対応の速さ | 中 | 見積提出までの日数 |
| 提案の内容 | 中 | 要件をなぞるだけか、改善案があるか |
| 追加費用の条件 | 中 | 後から膨らまないか |
| 担当者の印象 | 小〜中 | — |
「見積の範囲」が最も揉める項目です。安く見えた見積が、後から追加費用で高くなるケースを発注側は警戒しています。
受ける側の対応
- 要件の背景を聞く:何のために必要なのかを確認する
- 見積の前提を明記する:含むもの、含まないものを列挙
- 追加費用が発生する条件を書く:後出しにしない
- 提出を早くする:速さ自体が評価される
- 選択肢を2〜3案にする:最小構成、推奨、拡張
- 1つ提案を足す:要件をなぞるだけにしない
「選択肢を2〜3案にする」は効果があります。1案だけだと他社との比較になりますが、複数案あると自社案の中での比較に持ち込めます。
価格以外で選ばれる方法
| 軸 | 具体的な示し方 |
|---|---|
| 範囲の明確さ | 含む・含まないを明記し、追加費用の条件を書く |
| 速さ | 見積提出、着手、納品の各段階で |
| 実績の近さ | 同業・同規模・同用途の事例 |
| 体制 | 担当者の経験、稼働の確保 |
| リスクの低さ | 保証、やり直しの条件、解約条件 |
| 提案 | 要件の裏にある目的に対する改善案 |
| その後の対応 | 納品後のサポート、追加依頼のしやすさ |
「範囲の明確さ」で勝てることが多くあります。他社の見積が曖昧なとき、明確な見積は安心材料になります。
値引きを求められたとき
| 対応 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 範囲を減らす | 金額を下げるなら内容も調整する | 基本の対応 |
| 条件を変える | 期間、支払い、数量 | 継続取引が見込める場合 |
| 理由を聞く | 予算上限か、他社が安いか | 対処が変わる |
| 根拠を示す | 原価と工数の内訳 | 値引きしない場合 |
| 断る | — | 採算が合わない場合 |
単純な値引きは避けてください。理由なく下げられる金額だったと受け取られ、次回以降も同じ交渉になります。
断られたときにすること
- 理由を聞く:価格か、内容か、実績か、タイミングか
- いくらだったかを聞く:答えてもらえることもある
- 記録する:失注理由を分類して蓄積
- 関係を切らない:次の案件がある
- 時期を置いて再接触する:契約更新の時期を確認
失注理由の蓄積が最も価値があります。「価格で負けた」が続くなら価格設計、「実績で負けた」が続くなら事例の整備、と打つ手が変わります。
発注側として気をつけること
| 注意点 | 理由 |
|---|---|
| 同じ条件を全社に伝える | 条件が違うと比較にならない |
| 要件を具体的に示す | 曖昧だと見積の粒度がばらつく |
| 予算の範囲を伝える | 提案の規模が揃う |
| 本命が決まっているなら伝える | 相手の工数を無駄にしない |
| 他社の金額を明かさない | 商慣習上の配慮 |
| 断る場合は連絡する | 関係が続く |
断る連絡をしない発注側は少なくありませんが、次の案件で協力を得にくくなります。
まとめ
- 相見積もりは価格だけを比べるものではない
- 最も揉めるのは見積の範囲
- 受ける側は前提と追加費用の条件を明記する
- 選択肢を2〜3案にすると自社案の中での比較に持ち込める
- 単純な値引きは避け、範囲か条件を変える
- 断られたら理由を聞いて記録する
- 発注側は全社に同じ条件を伝える
よくある質問
相見積もりで最安値でないと勝てませんか?
そうとは限りません。発注側は社内で「なぜこの会社にしたか」を説明する必要があり、価格以外の理由があれば選べます。見積の範囲が明確であること、納期が確実であること、同業の実績があること、追加費用の条件が明示されていることは、いずれも選ぶ理由になります。
見積を出すときに気をつけることは何ですか?
含むものと含まないものを明記し、追加費用が発生する条件を書いてください。安く見える見積が後から膨らむケースを発注側は警戒しています。範囲が明確な見積は、金額がやや高くても選ばれることがあります。あわせて提出の速さも評価対象です。
値引きを求められた場合はどうしますか?
まず理由を聞いてください。予算上限を超えているのか、他社が安いのかで対処が違います。前者なら範囲を減らして予算内に収める案を出し、後者なら他社との違いを説明します。理由を聞かずに単純に値引きすると、「最初から下げられた金額」と受け取られ、次回以降も同じ交渉になります。
当て馬かどうかを見分ける方法はありますか?
確実な方法はありませんが、ヒアリングの浅さ、要件が既に細かく固まっていること、質問への回答が遅いこと、提出期限が極端に短いことは兆候になります。疑わしい場合は「他に何社ほど検討されていますか」「選定の基準は何ですか」と直接聞いてください。答えの具体性から状況が推測できますし、真剣に検討している発注側であれば答えてもらえます。