更新日:2026年8月16日
The Model(ザ・モデル)とは、営業プロセスをマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4つに分業し、各工程の指標を数値で管理する営業の型です。
米国のSalesforce社で実践された手法が日本で広く知られるようになったもので、サブスクリプション型の商材を前提としています。
導入して失敗する企業も多く、その原因のほとんどは「分業したこと」ではなく「工程間の受け渡しを設計しなかったこと」にあります。
4つの役割
| 役割 | 担当範囲 | 主なKPI |
|---|---|---|
| マーケティング | 認知〜リード獲得 | リード数、獲得単価、MQL数 |
| インサイドセールス | リード〜商談化 | 商談化数、商談化率、初回接触までの時間 |
| フィールドセールス | 商談〜受注 | 受注数、受注率、平均単価、商談期間 |
| カスタマーサクセス | 受注後〜継続・拡大 | 継続率、解約率、アップセル額 |
各工程の出力が次の工程の入力になる、直列の構造です。どこか1つが詰まると全体が止まります。
数値のつながり方
| 段階 | 例 | 転換率 |
|---|---|---|
| セッション | 20,000 | |
| リード | 400 | CV率 2.0% |
| MQL(有効リード) | 160 | 有効率 40% |
| 商談 | 48 | 商談化率 30% |
| 受注 | 12 | 受注率 25% |
| 年間売上 | 1,440万円 | 平均年額120万円 |
この形にすると目標から逆算できます。受注を月20件にしたい場合、受注率を上げるのか商談数を増やすのか、どこに手を打つと最も少ない労力で届くかが計算できます。
工程間の受け渡しを定義する
| 引き渡し | 決めること |
|---|---|
| マーケ → インサイドセールス | MQLの定義(スコア◯点以上、など)、渡す方法、対応期限 |
| インサイドセールス → フィールドセールス | 商談の定義(何をもって商談とするか)、引き継ぐ情報 |
| フィールドセールス → カスタマーサクセス | 受注時の期待値、導入時期、社内体制 |
| 各工程 → 前工程 | 差し戻しの条件と方法 |
最後の「差し戻し」が最も抜けます。条件を満たさないリードや、時期尚早と判明した商談を前工程に戻すルールがないと、各工程で滞留します。
うまくいかない原因
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 商談化率が低い | MQLの定義が甘い | 営業と定義を合意し直す |
| 営業がリードを見ない | 渡す件数が処理能力を超えている | 閾値を上げる |
| 情報が引き継がれない | 記録が個人のメモに留まっている | SFA/CRMへの記録を必須にする |
| 部門間で責任のなすり合い | 共通の目標がない | 受注数など最終指標を全部門で共有する |
| 受注後に解約が多い | 売るために期待値を上げすぎている | 受注時の合意内容をCSに引き継ぐ |
| 分業の管理工数が重い | 組織規模に対して分業が細かすぎる | 兼任に戻す |
「部門ごとのKPIは達成しているのに受注が増えない」という状態が典型的な失敗です。各工程が自分の指標だけを追うと、質を落として数を作る行動が出ます。
導入すべき規模
| 営業・マーケの人数 | 推奨 |
|---|---|
| 1〜3名 | 分業しない。1人が通しで担当する |
| 4〜8名 | マーケとセールスの2分業から |
| 9名以上 | インサイドセールスを分離 |
| 受注後の支援が重い商材 | カスタマーサクセスを分離 |
少人数で4分業すると、引き継ぎの工数が増えるだけで成果が落ちます。人数が増えてから段階的に分けてください。
商材との相性
| 向く商材 | 向かない商材 |
|---|---|
| サブスクリプション型 | 買い切り型で継続がない |
| 検討期間が数週間〜数か月 | その場で決まる、または数年かかる |
| 単価が中程度で件数が多い | 超高単価で年間数件 |
| Webから検討が始まる | 紹介・入札が中心 |
| 導入後の定着支援が必要 | 納品して完了 |
The Modelは「継続課金 × 一定の件数」の商材向けに作られた型です。年間数件の大型案件を扱う事業に当てはめると、分業のコストだけが残ります。
まとめ
- The Modelはマーケ / インサイドセールス / フィールドセールス / カスタマーサクセスの4分業
- 各工程の転換率を並べると目標から逆算できる
- 失敗の原因は分業ではなく受け渡しの未設計
- 差し戻しのルールを必ず作る
- 部門ごとのKPIだけでなく最終指標を共有する
- 少人数で4分業しない。段階的に分ける
- サブスクリプション型の商材を前提にした型である
よくある質問
The Modelは中小企業でも導入できますか?
そのままの形では難しいことが多いです。4分業は各役割に専任を置ける規模が前提で、営業が数名の組織で分けると引き継ぎの工数だけが増えます。まずは「マーケティング」と「営業」の2分業から始め、人数が増えた段階でインサイドセールスを切り出すのが現実的です。
部門間で対立が起きた場合はどうしますか?
原因はほぼ指標の設計にあります。マーケがリード数だけ、営業が受注数だけを追うと、質の低いリードを大量に渡す行動が正当化されます。対処は2つで、①MQLの定義を両部門で合意する、②マーケの指標に「商談化率」など質の指標を1つ加える、です。
カスタマーサクセスは必要ですか?
継続課金型で、導入後の定着が解約率を左右する商材では必要です。買い切り型で納品して完了する商材では、専任を置く意味は薄くなります。判断基準は「受注後に何もしないと解約されるか」で、答えがイエスなら役割として明確に置くべきです。
分業せずに成果を上げることはできますか?
できます。特に検討期間が長く、深い商材理解が必要な商材では、1人が通しで担当したほうが受注率が高くなることがあります。The Modelは万能な正解ではなく、件数が多く工程を標準化できる商材に適した型だと理解してください。