更新日:2026年8月16日
営業とマーケティングの連携とは、リードの獲得から受注までを1つの流れとして扱い、両部門が同じ基準と情報を共有して動く状態にすることです。
「マーケが渡すリードの質が低い」「営業がリードに対応してくれない」という対立は、多くの企業で起きています。
原因は担当者の姿勢ではなく、指標の設計と定義の不在にあります。仕組みで解消できる問題です。
対立が起きる構造
| マーケティング | 営業 | |
|---|---|---|
| 追う指標 | リード獲得数 | 受注数 |
| 評価される行動 | 数を集める | 確度の高い相手に時間を使う |
| 結果として起きること | 質を問わず数を増やす | 質の低いリードを放置する |
| 相手への不満 | 「せっかく渡したのに対応しない」 | 「使えないリードばかり」 |
どちらも自部門の指標に対して正しく行動しています。指標の設計が対立を生んでいるため、人を変えても解決しません。
解消の3ステップ
| 順 | やること | 効果 |
|---|---|---|
| ① | MQL / SQL の定義を文書で合意する | 「質」の議論が具体化する |
| ② | 差し戻しのルールを作る | 対応しきれない分の逃げ道ができる |
| ③ | 共通の指標を持つ | 同じ方向を向く |
①から始めてください。「良いリード」という言葉のままでは、永久に噛み合いません。
① MQL / SQL の定義
| 用語 | 意味 | 定義の例 |
|---|---|---|
| MQL | マーケティングが「営業に渡せる」と判断したリード | 対象業種・規模に合致し、スコア◯点以上 |
| SAL | 営業が受け取ったリード | MQLのうち、営業が対応を承諾したもの |
| SQL | 営業が「商談を進める」と判断したリード | 課題と検討時期が確認できたもの |
定義には具体的な条件を書いてください。「関心が高い」ではなく「料金ページを閲覧し、かつ従業員50名以上」のように、誰が見ても同じ判定になる形にします。
② 差し戻しのルール
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| 時期未定と判明 | マーケに戻し、育成対象に |
| 対象規模・業種の外 | 対象外として記録し、以後配信しない |
| 既に商談中 | 重複として統合 |
| 連絡が取れない(3回試行) | マーケに戻し、メール配信に切り替え |
| 営業が対応しきれない | 件数を絞る(閾値を上げる) |
戻す仕組みがないと、営業がリードを抱えたまま放置します。戻せることが分かっていれば、営業は無理に抱え込まなくなります。
③ 共通の指標を持つ
| 指標 | マーケ単独だと | 共通にすると |
|---|---|---|
| リード獲得数 | 質を問わず増やす | — |
| MQL数 | — | 定義を満たすものだけ |
| 商談化率 | 見ない | 質の指標として機能する |
| 商談数 | — | 両部門の共通目標 |
| 受注数 | 見ない | 最終的な共通目標 |
マーケの指標に「商談化率」を1つ加えるだけで行動が変わります。数を増やしても商談化率が下がれば評価されないため、質を意識するようになります。
運用のルール
- 引き渡しの方法を決める:SFAに登録する、通知を出す
- 対応の期限を決める:引き渡しから1営業日以内に初回接触
- 対応結果を記録する:連絡した/取れなかった/商談化した
- 月次で振り返る場を作る:両部門が同席する
- 失注理由を共有する:マーケの訴求に反映する
「対応結果の記録」が抜けると、何も改善できません。渡したリードがどうなったかが分からなければ、MQLの定義を調整することもできません。
月次で見る内容
| 項目 | 見ること |
|---|---|
| MQL数 | 目標に対してどうか |
| SAL率 | 営業が受け取った割合。低ければ定義が緩い |
| 商談化率 | MQLのうち商談になった割合 |
| 差し戻し数と理由 | どの条件で外れているか |
| 流入経路別の商談化率 | どの経路が質の高いリードを生むか |
| 未対応のまま滞留している件数 | 放置が起きていないか |
SAL率が低いときは、MQLの定義を厳しくしてください。営業が受け取らないリードを渡し続けても、両部門の不信が積み上がるだけです。
組織が小さい場合
| 規模 | 進め方 |
|---|---|
| 営業とマーケが同一人物 | 定義は不要。記録だけ残す |
| 営業2〜3名、マーケ1名 | 週次で口頭確認。定義は簡易でよい |
| 営業5名以上 | 定義を文書化。差し戻しルールも必要 |
| 部門が分かれている | 共通KPIと月次の振り返りが必須 |
小規模なうちは仕組みより会話で足ります。ただし記録だけは残しておいてください。人が増えたときに定義を作る材料になります。
まとめ
- 対立の原因は担当者ではなく指標の設計
- 解消は①定義の合意 → ②差し戻しルール → ③共通指標の順
- MQLの定義には誰が見ても同じ判定になる条件を書く
- 差し戻せる仕組みがないとリードが滞留する
- マーケの指標に商談化率を加えると行動が変わる
- 対応結果の記録がないと改善できない
- SAL率が低ければMQLの定義を厳しくする
よくある質問
「リードの質が低い」と言われた場合はどうすればよいですか?
「質が低い」を具体的な条件に翻訳してください。どの業種か、どの規模か、どの検討段階かを営業に聞き、それをMQLの定義に反映します。「質」という言葉のままでは議論が進みません。実際に商談化したリードと、しなかったリードの属性を並べて比較すると、条件が見えてきます。
MQLの定義はどう決めますか?
過去に商談化したリードの共通点から逆算してください。業種、企業規模、閲覧したページ、獲得経路を集計し、商談化率が高い条件を洗い出します。そのうえで、営業が対応できる件数に収まるよう閾値を調整します。理論値より、営業の処理能力に合わせることが重要です。
営業がリードに対応してくれません。
原因は件数が処理能力を超えているか、過去に質の低いリードが続いて信用を失っているかのどちらかです。前者なら閾値を上げて件数を絞り、後者なら定義を作り直して「これは違う」という実例を共有してください。加えて、対応期限(引き渡しから1営業日以内など)を明文化すると改善します。
小さい組織でも仕組みは必要ですか?
営業が2〜3名程度であれば、週次の口頭確認で足ります。ただし、渡したリードがどうなったかの記録だけは残してください。人数が増えて仕組みが必要になったとき、その記録がMQLの定義を作る材料になります。記録がないと、ゼロから推測で決めることになります。