更新日:2026年8月16日
失注分析とは、商談が受注に至らなかった理由を記録・分類し、共通する原因を見つけて改善につなげる取り組みのことです。
受注した理由より失注した理由のほうが改善に直結します。受注は複数の要因が重なった結果で、何が効いたか特定しにくいためです。
ただし記録の設計を誤ると集計できません。自由記述だけで集めると、後から傾向が読めなくなります。
失注理由の分類
| 分類 | 内容 | 対処の可否 |
|---|---|---|
| 価格 | 予算に合わない、他社が安い | 価格設計、価値の示し方 |
| 機能・仕様 | 必要な機能がない | 開発の優先順位 |
| タイミング | 今期は予算がない、時期尚早 | 育成に戻す |
| 実績・信頼 | 導入実績が少ない、不安 | 事例の整備 |
| 対応 | レスポンスが遅い、提案が的外れ | 営業プロセス |
| 競合 | 他社に決まった | 差別化 |
| 社内事情 | 担当者の異動、方針転換 | 対処しにくい |
| 要件の不一致 | 対象規模・業種が合わない | ターゲティング |
選択肢は事前にMECEに設計してください。「高かった」「合わなかった」のような曖昧な選択肢だと、集計しても打ち手が決まりません。
本当の理由を引き出す
| 表面的な回答 | 考えられる本当の理由 | 確認する質問 |
|---|---|---|
| 「予算が合わなかった」 | 価値が伝わっていない | 「どのくらいの金額感でしたか」 |
| 「社内で検討します」 | 決裁者に届いていない | 「どなたのご承認が必要ですか」 |
| 「時期尚早」 | 優先度が低い | 「いつ頃なら検討されますか」 |
| 「他社に決まった」 | 決め手が分からない | 「決め手は何でしたか」 |
| 「機能が足りない」 | 使い方の説明不足の可能性 | 「具体的にどの業務でお使いの予定でしたか」 |
「予算が合わなかった」は最も多い回答ですが、そのまま受け取らないでください。本当に予算不足のこともあれば、価値が金額に見合わないと判断されただけのこともあります。
聞き方
- 断られた直後に聞く:時間が経つと理由が薄れる
- 今後の改善のためと伝える:責める意図がないことを示す
- 選択肢を示して聞く:「価格でしょうか、機能でしょうか、時期でしょうか」
- 金額を聞く:「差し支えなければ、いくらくらいでしたか」
- 関係を切らない:次の機会につなげる
断られた直後が最も答えてもらいやすいです。相手も断ったことに気まずさがあり、理由を伝えることで区切りをつけたい心理が働きます。
記録する項目
| 項目 | 用途 |
|---|---|
| 失注理由(選択肢) | 集計する |
| 詳細(自由記述) | 文脈を残す |
| 競合他社名 | どこに負けているか |
| 提示金額と先方の予算 | 価格帯のずれを見る |
| 商談の段階 | どこで落ちたか |
| 商談期間 | 長期化して落ちたか |
| 流入経路 | 経路別の質を見る |
| 再接触の可否と時期 | 育成に戻す判断 |
「商談の段階」を記録すると、どこで落ちているかが分かります。初回商談で落ちるのと、提案後に落ちるのでは原因が違います。
集計から施策へ
| 集計結果 | 施策 |
|---|---|
| 価格が最多 | 価値の示し方(費用対効果の試算)、下位プランの検討 |
| 実績・信頼が多い | 業種別の導入事例を増やす |
| 機能が多い | どの機能かを集計し、開発の優先順位に反映 |
| タイミングが多い | 育成の仕組みを整え、再接触を自動化 |
| 対応が多い | 初回接触の速さ、提案の質を見直す |
| 要件の不一致が多い | ターゲティングとMQLの定義を見直す |
| 初回商談で落ちる | 商談前の情報提供、事前の期待値調整 |
「要件の不一致」が多い場合、営業ではなくマーケティングの問題です。対象外の企業をリードとして渡していることになります。
失注後の再アプローチ
| 失注理由 | 再接触の時期 | 切り口 |
|---|---|---|
| タイミング | 相手が言った時期の1か月前 | 「その後いかがですか」+最新事例 |
| 予算 | 次の予算編成の時期 | 価格改定、下位プランの案内 |
| 機能 | その機能が実装されたとき | 「ご要望の◯◯が対応できるようになりました」 |
| 他社に決定 | 契約更新の時期(1年後など) | 乗り換え事例 |
| 担当者の異動 | 新しい担当者が着任したとき | 改めての紹介 |
失注は終わりではありません。特に「他社に決定」した相手は、その契約が更新時期を迎えるタイミングが再提案の機会になります。
運用のコツ
- 入力を必須にする:失注ステータスに変更するとき理由を必ず選ぶ
- 選択肢は7つ以内:多いと選ぶのに迷い、精度が落ちる
- 月次で集計して共有する:営業とマーケの両方に
- 四半期ごとに分類を見直す:「その他」が多ければ選択肢が合っていない
- 担当者を責める材料にしない:責めると正直に書かれなくなる
最後の項目が最も重要です。失注理由が評価に使われると、担当者は「社内事情」「タイミング」など自分の責任にならない理由を選ぶようになり、データが使えなくなります。
まとめ
- 受注理由より失注理由のほうが改善に直結する
- 選択肢は事前にMECEに設計し、7つ以内に
- 断られた直後が最も答えてもらいやすい
- 「予算が合わなかった」をそのまま受け取らない
- 商談の段階を記録すると、どこで落ちるかが分かる
- 「要件の不一致」が多いのはマーケティングの問題
- 失注理由を評価に使わない。正直に書かれなくなる
よくある質問
失注理由を聞くタイミングはいつがよいですか?
断られた直後です。時間が経つと相手の記憶が薄れ、当たり障りのない回答になります。断られた直後は相手にも気まずさがあり、理由を伝えることで区切りをつけたい心理が働くため、正直な回答を得やすくなります。
「予算が合わなかった」と言われた場合、どう受け止めればよいですか?
そのまま受け取らないでください。本当に予算がない場合と、価値が金額に見合わないと判断された場合があります。「差し支えなければ、どのくらいの金額感でしたか」と聞くと区別できます。提示額と大きく離れていれば予算の問題、近ければ価値の伝え方の問題です。
失注理由が集計できません。
選択肢の設計に問題があります。「高かった」「合わなかった」のような曖昧な選択肢だと分類できません。「価格/機能/タイミング/実績・信頼/対応/競合/社内事情/要件の不一致」のように、それぞれが別の打ち手につながる形で設計してください。あわせて、自由記述は文脈を残すために併用しますが、集計は選択肢で行います。
失注した相手に再度連絡してもよいですか?
失注理由によります。「タイミング」「予算」「機能」が理由であれば、状況が変わったタイミングで再接触する価値があります。特に「他社に決定」した相手は、その契約が更新時期を迎える頃が機会になります。ただし明確に拒否された相手や、要件が合わない相手には接触しないでください。再接触の可否を失注時に記録しておくと判断できます。