更新日:2026年8月16日
新規事業の立ち上げ期のマーケティングとは、まだ顧客も実績もない段階で、需要があるかを確かめながら最初の顧客を獲得する活動のことです。
既存事業と最も違うのは「実績も認知もない」ことです。事例も口コミもありません。
この段階でやるべきは規模を追うことではなく、需要が本当にあるかを確かめることです。
検証する順番
| 順 | 検証すること | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 1 | その課題は実在するか | 対象者に直接聞く |
| 2 | お金を払ってでも解決したいか | 有償の申し込みが取れるか |
| 3 | 自社の解決策で解決できるか | 実際に提供してみる |
| 4 | 繰り返し獲得できるか | 2件目、3件目が取れるか |
| 5 | 採算が合うか | 獲得コストと単価 |
| 6 | 広げられるか | — |
1と2を飛ばさないでください。「あったら便利」と「お金を払う」の間には大きな差があります。
需要の確かめ方
| 方法 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|
| 対象者へのヒアリング | 課題の実在 | 「あったら使う」は当てにならない |
| 検索数の確認 | 顕在需要の有無 | ゼロなら認知されていない |
| 既存の代替手段 | どう解決しているか | 競合が無い=需要が無い可能性 |
| 最小構成での販売 | 実際に買うか | 最も確実 |
| 事前予約・仮申込 | — | — |
「競合がいない」を好機と捉えないでください。誰もやっていないのは、成り立たないからである可能性があります。
最初の顧客の取り方
| 方法 | 適性 | 理由 |
|---|---|---|
| 既存顧客への提案 | 最適 | 関係があり、話を聞いてもらえる |
| 紹介 | 高い | — |
| 個別のアウトバウンド | 高い | 対象を絞って直接 |
| 既存事業のリスト | 高い | — |
| 検索(SEO) | 低い | 時間がかかる |
| 広告 | 中 | 検証には使えるが単価が高い |
立ち上げ期は既存の関係を使ってください。SEOで最初の顧客を取ろうとすると、需要の検証に半年かかります。
最小構成で始める
| 項目 | 立ち上げ期 | 後で整える |
|---|---|---|
| サイト | 1ページで足りる | — |
| 資料 | 1本 | — |
| 事例 | なし(正直に伝える) | 獲得後に作る |
| 価格 | 仮でよい | 検証後に確定 |
| 機能・提供範囲 | 最小限 | — |
| ブランド | 後回し | — |
作り込んでから売り始めないでください。需要がなければ、作ったものがすべて無駄になります。
実績がないときの伝え方
| やり方 | 評価 |
|---|---|
| 実績があるように見せる | ×(後で問題になる) |
| 正直に「初期の導入先を探している」と伝える | ○ |
| 条件を下げる(価格、期間) | ○(初期は妥当) |
| 関連する実績を示す | ○(既存事業の実績など) |
| 一緒に作る姿勢を示す | ○ |
初期の顧客には、初期であることを伝えたほうが協力を得やすくなります。要望を聞きながら一緒に作る形にすると、事例にも協力してもらえます。
価格の検証
| 方法 | 分かること |
|---|---|
| 複数の価格で提示する | どこで断られるか |
| 断られた理由を聞く | 価格か、価値か |
| 受注率を見る | 高すぎ・安すぎの兆候 |
| 提供にかかる工数を測る | 採算 |
| 既存の代替手段の費用を聞く | 相場観 |
受注率が高すぎるのは安すぎる兆候です。立ち上げ期は特に安く設定しがちですが、後で上げるのは困難です。
撤退・継続の判断
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 有償の申し込みが1件も取れない | 需要か、伝え方の問題 |
| 1件は取れたが2件目が取れない | 再現性がない |
| 受注できるが提供の工数が合わない | 採算の見直し |
| 継続率が極端に低い | 価値が出ていない |
| 安定して受注できる | 拡大へ |
「1件は取れたが2件目が取れない」状態を軽視しないでください。最初の1件は関係性で取れることがあり、再現性の証明にはなりません。
立ち上げ期にやらないこと
- 大規模なサイト制作:1ページで検証できる
- ブランディング:認知させるものがまだない
- MAツールの導入:育成する母数がない
- 幅広い記事の量産:需要が定まっていない
- 組織の整備:—
これらは需要が確認できてから着手してください。先に整えると、方向転換のたびに作り直しになります。
まとめ
- 検証の順番は課題の実在 → 有償の申込 → 提供 → 再現性 → 採算
- 「あったら便利」と「お金を払う」は違う
- 「競合がいない」は好機とは限らない
- 最初の顧客は既存の関係から
- 作り込んでから売り始めない
- 実績がないことは正直に伝える
- 1件目と2件目は意味が違う(再現性)
よくある質問
新規事業で最初に何を検証すべきですか?
その課題が実在し、お金を払ってでも解決したいと思われているかです。ヒアリングで「あったら使う」と言われても、実際に有償の申し込みが取れるかは別です。最も確実なのは、最小構成のものを実際に売ってみることです。
最初の顧客はどう獲得すればよいですか?
既存顧客や既存の関係から始めてください。話を聞いてもらえる関係が既にあるため、検証が速く進みます。SEOや広告で最初の顧客を取ろうとすると、需要の検証だけで半年かかります。立ち上げ期は速さが重要です。
実績がないことをどう伝えるべきですか?
正直に「初期の導入先を探している」と伝えてください。実績があるように見せると、後で必ず問題になります。初期であることを伝えたうえで、条件を調整し、要望を聞きながら一緒に作る姿勢を示すと、協力を得られることがあります。その顧客が最初の事例になります。
撤退の判断基準はありますか?
「1件は取れたが2件目が取れない」状態が重要な分岐点です。最初の1件は関係性で取れることがあり、再現性の証明にはなりません。2件目、3件目が同じ方法で取れるかを見てください。加えて、受注できても提供の工数が単価に見合わない場合は、採算の構造から見直す必要があります。