更新日:2026年8月16日
部門をまたいだ指標の設計とは、獲得から受注までの一連の流れの中で、どの数字を誰が責任を持つかを決めることです。
指標の設計を誤ると、各部門が自分の数字だけを追い、全体の成果が上がりません。
これは担当者の姿勢の問題ではなく、構造の問題です。
指標が対立を生む構造
| 部門 | 追う指標 | 最適な行動 | 起きること |
|---|---|---|---|
| マーケ | リード数 | 数を集める | 質が下がる |
| インサイドセールス | 商談数 | 商談を作る | 質の低い商談が増える |
| 営業 | 受注数 | 確度の高い案件に集中 | 質の低いリードを放置 |
| カスタマーサクセス | 継続率 | — | 受注時の期待値とのずれを引き継ぐ |
どの部門も自分の指標に対して正しく行動しています。設計が対立を生んでいます。
責任範囲の切り方
| 段階 | 主担当 | 責任を持つ指標 |
|---|---|---|
| 流入〜リード獲得 | マーケ | リード数、獲得単価 |
| リードの選別 | マーケ | MQL数、有効率 |
| 商談化 | インサイドセールス | 商談数、商談化率 |
| 受注 | 営業 | 受注数、受注率、単価 |
| 定着・継続 | カスタマーサクセス | 継続率、稼働率 |
| 拡大 | カスタマーサクセス・営業 | アップセル額 |
境界の指標を両部門で共有してください。商談化率はマーケと営業の両方に関わります。
量と質をセットにする
| 部門 | 量の指標 | 質の指標 |
|---|---|---|
| マーケ | リード数 | 商談化率 |
| インサイドセールス | 商談数 | 商談後の受注率 |
| 営業 | 受注数 | 継続率、単価 |
| カスタマーサクセス | 継続率 | 拡大額 |
量の指標には必ず質の指標を1つ添えてください。これだけで多くの対立が解消します。
共通指標を置く
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 商談数 | マーケと営業の接点 |
| 受注数 | 全部門の最終目標 |
| 受注単価(CAC) | — |
| LTV / CAC | 投資の妥当性 |
| NRR | 既存だけで伸びているか |
最低でも「受注数」は全部門で共有してください。各部門の指標だけだと、全体が見えなくなります。
境界で決めること
| 境界 | 決めること |
|---|---|
| マーケ → IS | MQLの定義、渡す方法、対応期限 |
| IS → 営業 | 商談の定義、引き継ぐ情報 |
| 営業 → CS | 受注時に約束したこと、期待値 |
| 各部門 → 前工程 | 差し戻しの条件と方法 |
「差し戻し」を必ず設計してください。一方通行にすると、条件を満たさないものが各工程で滞留します。
指標の見直し
| 状況 | 見直す内容 |
|---|---|
| リード数は増えたが受注が横ばい | マーケに質の指標を追加 |
| 営業がリードを見ない | MQLの定義を厳しく、件数を絞る |
| 商談は多いが受注率が低い | 商談の定義を厳しく |
| 受注は増えたが解約も増えた | 受注時の期待値、CSの指標 |
| 部門間で数字が食い違う | 定義と分母を統一 |
「部門間で数字が食い違う」はよく起きます。リードの定義、商談の定義、分母の取り方を統一してください。
運用のルール
- 定義を文書にする:口頭の合意は食い違う
- 一度決めたら期中に変えない:比較できなくなる
- 月次で全部門が同席して見る:—
- 差し戻しの件数も見る:どこで詰まっているか
- 指標を評価に使いすぎない:数字合わせが起きる
指標を個人の評価に直結させすぎると、数字合わせが起きます。失注理由を「社内事情」に寄せる、商談の定義を緩めるといった行動が出ます。
小規模組織の場合
| 規模 | 設計 |
|---|---|
| 1〜2名(兼務) | 指標の分担は不要。受注数だけ見る |
| 3〜5名 | マーケと営業の2分割 |
| 6〜10名 | インサイドセールスを分離 |
| 10名以上 | 4分業を検討 |
少人数で細かく指標を分けないでください。管理の工数が増えるだけで、成果は変わりません。
まとめ
- 対立は担当者ではなく指標の設計が生む
- 量の指標に質の指標を1つ添える
- 最低でも受注数は全部門で共有する
- 境界で定義・引き継ぎ・差し戻しを決める
- 差し戻しを一方通行にしない
- 定義は文書にし、期中に変えない
- 少人数で細かく分けない
よくある質問
マーケティングと営業で対立が起きます。
指標の設計を見直してください。マーケがリード数だけ、営業が受注数だけを追う設計では、質を無視して数を増やす行動が正当化されます。マーケの指標に「商談化率」を1つ加えるだけで、行動が変わります。担当者の姿勢の問題ではなく、構造の問題です。
どこまでを誰の責任にすべきですか?
流入〜リード獲得と選別はマーケ、商談化はインサイドセールス、受注は営業、定着はカスタマーサクセスが基本形です。ただし境界の指標(商談化率など)は両部門で共有してください。片方だけの責任にすると、もう一方が関与しなくなります。
部門間で数字が食い違います。
定義と分母を統一してください。「リード」に展示会の名刺を含むか、「商談」を何をもって成立とするか、商談化率の分母を全リードにするかMQLにするかで、数字がまったく変わります。文書にして合意し、一度決めたら期中に変えないでください。
少人数の組織でも指標を分けるべきですか?
1〜2名の兼務体制では不要です。受注数だけを見て、必要に応じて中間指標を確認する形で十分です。細かく分けると管理の工数が増えるだけで、成果は変わりません。人数が増えて、マーケと営業が別の人になった段階で分担を設計してください。