フォーム営業にAIを使うと聞くと、「文面をAIに書かせて大量に送る」ことを思い浮かべるかもしれません。ただ、実際に運用してみると、AIに任せてよい部分と、任せると崩れる部分がはっきり分かれます。
当社は、自社のフォーム営業ツールにAIの機能を組み込み、何度か作り直してきました。この記事では、その経験をもとに、フォーム営業のどの工程にAIを使えるか、会社ごとに文面を変えるときに何に気をつけるかを説明します。フォーム営業そのものの基本は「フォーム営業とは?」で紹介しています。
会社ごとのひと言の差し込みと、半分だけ使って効果を比べる設定は、フォーム営業 by grip space で使えます。毎月50通まで無料です。 フォーム営業 by grip space を見る
フォーム営業でAIが手伝える工程
フォーム営業は、送る相手を決める → リストを作る → 文面を作る → 送る → 反応を見て直す、の5段階で進みます。それぞれの工程で、AIに任せられることと、人が決めるべきことを整理すると次のようになります。
| 工程 | AIに任せられること | 人が決めること |
|---|---|---|
| 送る相手を決める | 自社のサイトや過去の結果を読み、狙う業界・規模・エリアの案を出す | どの案で送るか。自社の提案が本当に役立つ相手か |
| リストを作る | 会社ごとの事業内容を読み、条件に当てはまるかを判定する | リストの条件と、送らない相手(取引先・営業お断りなど) |
| 文面を作る | 相手の事業に触れる1〜2文を、会社ごとに作る | 提案の中身・名乗り・断り方を含む共通の本文 |
| 送る | (AIより、決まった手順を確実に繰り返す仕組みの出番) | 送る日と、1日に送る件数 |
| 反応を見て直す | — | どの文面・どのリストが良かったかの判断 |
ポイントは、AIが得意なのは「1社ずつ読んで、少しずつ違うものを作る」作業だということです。人が1社ずつ相手のサイトを読んで書き出しを変えるのは、数十社でも大変ですが、AIなら数百社でも同じ手間で済みます。
一方で、何を提案するか、誰に送らないか、どの結果を良しとするかは、自社の事情を知っている人にしか決められません。ここをAIに任せると、送る量は増えても成果につながりません。
文面は「全文を書き直させない」
会社ごとに文面を変えるとき、最初に思いつくのは「共通の文面と相手の情報をAIに渡して、相手に合わせて書き直してもらう」方法です。当社も最初はこの方法でした。
ところが、実際に送る文面を確認すると、次のような崩れが見つかりました。
- 1文で済む導入が、相手を持ち上げる言葉を重ねた3段落(約250字)に膨らむ
- 名乗りの段落が消える、または次の段落と同じ文が二重になる
- 飾りのない文面に、画面表示用の記号(HTMLのタグ)が混ざる
全文を書き直させる限り、こうした崩れを指示だけで防ぎきることはできませんでした。そこで当社は、AIには差し込む1〜2文だけを作らせ、名乗りの段落の直後にプログラムで入れるやり方に変えました。名乗り・提案・署名・書式は、人が書いた共通の文面のままです。
差し込みの例
Web制作会社が地域の工務店に送る想定の例です。色の付いた1文が、会社ごとに変わる部分です。会社名・事業・連絡先はすべて架空です。
突然のご連絡失礼いたします。ホームページ制作のご提案でご連絡しました。
株式会社サンプルウェブの山田と申します。地域の注文住宅を中心に、施工事例を数多く公開されている点が目に留まりました。
当社では工務店様のサイトで、施工事例ページに問い合わせボタンを追加する改修を行っています。改修の例をまとめた資料がございますので、ご興味があればご返信ください。
ご不要でしたら、その旨をご返信ください。今後のご連絡は控えます。
差し込む文が1〜2文なら、うまく作れなかった会社には差し込まずに送ればよいだけです。全文を書き直す方法では、失敗したときに文面全体が使えなくなります。失敗しても共通の文面で送れることも、この方法の利点です。
AIに読ませる情報で、文の質が決まる
AIが相手に触れる文を作れるかどうかは、相手の事業についてどれだけ正確な情報を渡せるかで決まります。
たとえば、会社のデータベースにある「事業内容」が「建築工事業」のような1文しかない場合、AIが書けるのは「建築業を営まれている貴社に」程度の、どの会社にも当てはまる文です。これでは一斉送信と変わりません。
当社のツールでは、送り先のサイトを巡回して、事業の概要・提供しているサービス・想定している顧客・強みをAIで整理した情報を用意しておき、これがある会社はこちらを優先して読ませています。無い会社は、データベースの事業内容で作ります。
手作業でAIを使う場合も、相手のサイトの「会社概要」や「事業内容」のページの文章を渡すと、文の具体性が大きく変わります。逆に、社名だけを渡して「この会社向けの一文を」と頼むのは避けてください。AIは知らないことを推測で補います。
AIのひと言を、崩さずに差し込む
送り先の事業内容をAIが読み、名乗りの後に1〜2文だけを差し込みます。本文は書き換えません。半分だけ使えば、共通の文面とクリック率を比べられます。
フォーム営業 by grip space を見るAIの文で起きやすい問題と、防ぎ方
AIが作った文は、人が1通ずつ確認できない量になります。そのため、指示でルールを決めておき、ルールに合わない文は使わないという二重の仕組みが必要です。当社が決めているルールは次のとおりです。
- 1短くする ── 1〜2文、合計80字以内。指示を守らず長くなったもの(120字超)は使いません。
- 2触れるのは1点だけ ── 事業や強みを並べ立てると、かえって読まれません。
- 3持ち上げない ── 「拝察いたします」「卓越した」のような言葉は使わせません。相手を褒める言葉が重なるほど、営業らしさが強くなります。
- 4確かめられないことを書かない ── 受賞歴・売上・従業員数などを推測で書かせません。
- 5伏字や記号を残さない ── 「〇〇様」「[会社名]」のような埋め忘れがある文は、そのまま相手に届いてしまうので使いません。
- 6呼び方をそろえる ── 相手は「貴社」と呼び、社名は書かせません。社名の誤りや、法人格の位置の誤りを防げます。
ルールに合わない文が返ってきたときは、その会社には差し込まず、共通の文面のまま送ります。「AIの文が使えなかったから送らない」とすると、送信の予定そのものが崩れるためです。
口調や文字数を変えたいときは、AIへの指示を追加します。ただし、追加の指示よりも上のルールを優先させてください。指示で「相手の実績を具体的に褒める」と書いても、確かめられないことを書かせないルールは外さない、ということです。
嫌がられない文面全体の型は「問い合わせフォームからの営業|嫌がられない送り方と文面の型」で紹介しています。AIで差し込む1文は、この型の「連絡したきっかけ」の部分にあたります。
効果は「半分だけ使って」確かめる
AIで書き出しを変えれば反応が良くなる、と決めつけるのは早すぎます。業界や提案の内容によっては、共通の文面と差が出ないこともあります。
確かめ方はシンプルで、同じ日に送る相手を半分に分け、半分はAIで書き出しを変えた文面、残り半分は共通の文面で送ります。曜日や時期が同じなので、差が出れば文面の違いによるものと考えられます。
比べる数字は、商談の件数ではなくクリック率(送れた会社のうち、文面のリンクを押した会社の割合)がおすすめです。商談は月に数件しか出ないため、1件の差で結論が逆になってしまいます。クリック率の数え方と、比べるのに必要な件数は「フォーム営業の効果測定|CV数では判断できない理由とクリック率」で説明しています。
差がはっきり出てから、全件に広げてください。最初から全件に使うと、比べる相手が無くなり、AIが効いているのかどうか分からなくなります。
フォーム営業 by grip space のAI機能
当社の フォーム営業 by grip space では、この記事で説明した考え方をそのまま機能にしています。
- ターゲットの提案:貴社のサイトをAIが読み、狙う業界・会社の規模・エリアの組み合わせを、リスト案として3つ提案します(フリープランは月3回まで)。
- 会社ごとのひと言(ライトプラン以上):送り先の事業内容をAIが読み、相手に触れる1〜2文を名乗りの後に差し込みます。本文は書き換えません。ルールに合わない文や準備が間に合わなかった会社は、共通の文面のまま送ります。
- 「半分だけ使う」設定:使い方は「使わない」「半分だけ使う(効果を比較する)」「全件に使う」から選べます。半分だけ使うと、AIの文面と共通の文面のクリック率がレポートに並びます。
- 条件での文面の差し替え(ライトプラン以上):「広告代理店・Web制作会社」のような条件と専用の文面を登録しておくと、AIが1社ずつ事業内容を読んで判定し、当てはまる会社には専用の文面を送ります。判断できない会社には共通の文面を送ります。
- 会社ごとの手直し:特定の会社だけ文面を自分で直すこともできます。手で直した文面は、AIで上書きされません。
AIの文面を準備するため、AIを使う設定にしたときは、配信の開始が約1時間後になります。
送信数は、送信を完了できた件数だけを数えます。毎月50通までは無料で、ライトプランは初めてなら14日間無料で試せます。
よくある質問
フォーム営業の文面はAIに全部書かせてもよいですか?
おすすめしません。本文全体を会社ごとに書き直させると、文が長く膨らむ、名乗りが消える、同じ文が二重になる、といった崩れが起きやすくなります。提案の中身は人が書いた共通の本文のままにし、AIには相手の事業に触れる1〜2文だけを作らせるほうが、崩れずに会社ごとの違いを出せます。
AIが事実と違うことを書く心配はありませんか?
あります。AIは、読ませた情報が少ないと、それらしい内容を推測で補うことがあります。受賞歴・売上・従業員数のように確認できないことは書かせない、相手を持ち上げる言葉を使わせない、といったルールを決めておき、ルールに合わない文は使わずに共通の文面で送る仕組みにしておくと安全です。
AIで文面を変えると反応は良くなりますか?
業界や文面によって変わるため、一概には言えません。送り先を半分に分け、半分はAIで書き出しを変えた文面、残りは共通の文面で同じ日に送り、クリック率を比べて確かめるのが確実です。効果が分かってから全件に広げてください。
フォーム営業のターゲット選びにもAIは使えますか?
使えます。自社のサイトや過去の送信結果をAIに読ませて、狙う業界・会社の規模・エリアの案を出させることができます。ただし最終的にどの案で送るかは、自社の提案が本当に役立つ相手かを考えて人が決めてください。
まとめ
- AIが得意なのは「1社ずつ読んで、少しずつ違うものを作る」作業。何を提案し、誰に送らないかは人が決める
- 文面は全文を書き直させず、相手の事業に触れる1〜2文だけを作らせて差し込む
- 文の質は、AIに読ませる事業内容の情報で決まる。社名だけを渡して書かせない
- 短く・1点だけ・持ち上げない・推測で書かない、のルールを決め、合わない文は使わず共通の文面で送る
- 効果は、同じ日に半分ずつ送ってクリック率で比べる。差が出てから全件に広げる